建築物の複雑化・高度化にともない、建築家の分業化・専門化が進んでいます。建築設計の仕事は、空間やデザインを考える「意匠設計」、材料や強度を考える「構造設計」、電気や水道などの計画を考える「設備設計」におおむね分けられます。私は、この中でお施主さんの意向が最も反映され、全ての分野をまとめていく意匠設計を担当しています。
お施主さんとの打ち合わせにたっぷりと時間を使い「対話」を通して、ライフスタイルやご要望などを話し合い、その思いを図面に描いていきます。もちろん、ディテールにもこだわりじっくりと考えながら作業を進めていく。時には、お酒を飲みかわしながら、違った視点で対話をすることで、新たな考え方が生まれてくることがあります。例えばクルマ好きのお客さんだと、たいていクルマ談義に華が咲きます。
「じゃあ、クルマをリビングや階段からも眺められるようにしましょう」「ここはガラス張りのガレージにして排気ガス対策に換気扇をつけましょう。え、オートモビリアも趣味なんですか、(奥様の顔色を伺いつつ)だったら、それを飾る棚を設置して、ギャラリー風にしたらどうです? 」といった具合に、アイデアを出しながら対話を進めていく。施主さんによっては、1年以上も設計に時間を費やすことがあります。
ちなみに私はアイデアが浮かぶとその場でスケッチするので、スケジュール帳は、すぐ真っ黒に。毎年、同じスケジュール帳を2冊購入しています。
工事が始まれば、今度は職人さんが加わっての新たな対話が再び始まり、施主さんと工事業者さんと一体になって、建物を創り込んでいきます。この対話のプロセスが、たまらなく面白くもあり、建物を創造する上で最も大切な要素のひとつだと考えています。 |